経理をやっていた頃、会社の資金繰りが厳しくなってファクタリングを調べたことがあります。そのとき一番混乱したのが「2社間」と「3社間」の違いでした。
どちらも売掛金を早期に現金化するサービスなのに、手数料も仕組みもかなり違う。当時は情報が散らばっていて、正直よくわからないまま時間だけ過ぎてしまいました。
この記事では、私が改めて調べて理解した2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いを、できるだけわかりやすく整理しています。「結局どっちを使えばいいの?」という疑問にも、ケース別に答えを出してみました。
目次
まずファクタリングの基本をおさらい
2社間・3社間の違いに入る前に、ファクタリングそのものの仕組みを簡単に振り返っておきます。ここを押さえておかないと、2つの違いがぼんやりしたままになるので。
売掛金を「売る」という仕組み
ファクタリングは、ひとことで言えば「売掛金をファクタリング会社に売って、入金日より前に現金を受け取る」サービスです。
銀行の融資とは根本的に違います。融資はお金を借りて返す。ファクタリングは売掛金という資産を売る。法律上は「債権譲渡」にあたり、民法466条で債権は譲渡できると定められています。
つまり、借金ではなく売買。ここが大事なポイントです。
2020年4月の民法改正で、取引先との契約に「債権の譲渡を禁止する」という特約が付いていても、債権譲渡は原則有効になりました。以前はこの特約がネックになるケースもあったのですが、法改正でハードルが下がっています。
償還請求権なし(ノンリコース)とは
ファクタリングでよく出てくるのが「償還請求権(しょうかんせいきゅうけん)なし」という言葉。ノンリコースとも呼ばれます。
これは、もし売掛先が倒産などで代金を払えなくなっても、ファクタリング会社から「あなたが代わりに払ってください」と請求されない仕組みのことです。
売掛金の未回収リスクをファクタリング会社が引き受けてくれる。だから手数料がかかるわけですね。
ただし、契約書に「償還請求権あり」と書いてある場合は話が別です。回収できなかったときに利用者が負担する契約は、実質的に貸付と同じ。金融庁のファクタリングに関する注意喚起ページでも、こうした偽装ファクタリングへの警告が出ています。
2社間ファクタリングの仕組みと特徴
ここからが本題です。まずは2社間ファクタリングから見ていきます。
取引の流れ
2社間ファクタリングは、名前のとおり「自社」と「ファクタリング会社」の2者だけで取引が完結します。売掛先(取引先)はこの取引に関与しません。
流れはこうなります。
- 自社がファクタリング会社に売掛債権の買取を申し込む
- ファクタリング会社が審査を行う
- 契約が成立し、手数料を差し引いた金額が自社に入金される
- 売掛金の支払期日に、売掛先から自社に代金が振り込まれる
- 自社がその代金をファクタリング会社に送金する
ポイントは、売掛先には何も伝えないこと。売掛先から見れば、いつもどおり自社に代金を支払うだけです。
ステップ4と5がちょっとややこしいんですが、売掛先から自社に入金されたお金は、すでにファクタリング会社のものです。そのお金をそのままファクタリング会社に送金する義務がある。ここでうっかり別の支払いに使ってしまうと、トラブルになります。経理の現場では「入金されたら即座に転送」という運用ルールを決めておくのが大切です。
また、売掛先に通知しないぶん、ファクタリング会社としては「本当にその売掛金は存在するのか」「二重に譲渡されていないか」というリスクを抱えます。このリスクに対応するため、2社間ファクタリングでは「債権譲渡登記」を求められることがあります。
債権譲渡登記には、登録免許税(7,500円)と司法書士への報酬(6〜8万円程度)がかかります。この費用も含めてトータルコストを把握しておく必要があります。
手数料の相場感
2社間ファクタリングの手数料相場は、おおむね8〜18%程度です。
100万円の売掛金をファクタリングに出した場合、手数料が15%なら15万円が引かれて、手元に入るのは85万円。結構大きいですよね。
なぜこんなに高いかというと、ファクタリング会社が抱えるリスクが大きいからです。売掛先に直接確認できないので、架空の売掛金だったり、同じ売掛金を複数の会社に売る「二重譲渡」のリスクがある。そのリスク分が手数料に上乗せされています。
メリットとデメリット
2社間ファクタリングのメリットとデメリットを整理します。
メリットはこのあたり。
- 売掛先にファクタリングの利用を知られない
- 最短即日で資金調達できるスピード感
- 売掛先の承諾手続きが不要なので手続きがシンプル
- 償還請求権なしなら、売掛先の倒産リスクも移転できる
デメリットはこちら。
- 手数料が高い(8〜18%程度)
- 売掛先から入金された代金を自分でファクタリング会社へ送金する手間がある
- 債権譲渡登記の費用が別途かかる場合がある
- 3社間と比べて審査が厳しくなる傾向
私が経理時代に感じたのは、やっぱり手数料のインパクトです。急場をしのぐには助かるけれど、毎月のように使うと資金繰りがかえって苦しくなる。そこは冷静に見ておきたいところです。
3社間ファクタリングの仕組みと特徴
続いて、3社間ファクタリングを見ていきます。
取引の流れ
3社間ファクタリングでは、「自社」「ファクタリング会社」「売掛先」の3者が関わります。売掛先に債権譲渡の事実を通知し、承諾を得るのが2社間との最大の違いです。
流れはこうなります。
- 自社がファクタリング会社に売掛債権の買取を申し込む
- ファクタリング会社が審査を行う
- 自社が売掛先に債権譲渡の通知を行い、承諾を得る
- 契約が成立し、手数料を差し引いた金額が自社に入金される
- 売掛金の支払期日に、売掛先がファクタリング会社に直接代金を支払う
2社間との大きな違いは、ステップ3と5です。売掛先が「わかりました、ファクタリング会社に直接払います」と承諾してくれないと成り立ちません。
この「承諾を得る」プロセスに時間がかかるのが3社間の弱点でもあります。売掛先の担当者に説明して、社内で稟議を通して、承諾書に捺印してもらう。相手先の対応スピードに依存するので、自社だけではコントロールしにくい部分です。
その代わり、ファクタリング会社は売掛先から直接回収できるので、リスクがぐっと下がります。自社を経由しないぶん、2社間のように「入金されたお金を転送し忘れた」というリスクもありません。
手数料の相場感
3社間ファクタリングの手数料相場は1〜9%程度。2社間と比べると大幅に安いです。
同じ100万円の売掛金でも、手数料5%なら5万円。手元に95万円が残ります。2社間の15%と比べると、その差は10万円。金額が大きくなればなるほど、この差は無視できません。
手数料が安い理由は明確で、売掛先が直接ファクタリング会社に支払うから。架空債権や二重譲渡のリスクがほぼなくなり、回収の確実性が高い。リスクが低いぶん、手数料も抑えられるわけです。
メリットとデメリット
3社間ファクタリングの良い面と注意すべき面をまとめます。
メリットはこのあたり。
- 手数料が安い(1〜9%程度)
- 審査が通りやすい(売掛先の信用力が重視される)
- 売掛金の回収をファクタリング会社に任せられる
- 参入障壁が高く、悪徳業者が少ないとされている
デメリットはこちら。
- 資金化まで1〜2週間かかることが多い
- 売掛先にファクタリング利用を知られる
- 売掛先が承諾してくれないと利用できない
一番気になるのは、やはり売掛先に知られること。「あの会社、資金繰りが苦しいのかな」と思われるリスクがあります。私も前職で「取引先にどう見られるか」は常に気にしていたので、この心理的なハードルはよくわかります。
2社間と3社間、結局なにが違う?
ここまでの内容を、比較表でまとめてみます。
| 項目 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
|---|---|---|
| 当事者 | 自社・ファクタリング会社 | 自社・ファクタリング会社・売掛先 |
| 手数料相場 | 8〜18%程度 | 1〜9%程度 |
| 資金化スピード | 最短即日 | 1〜2週間程度 |
| 売掛先への通知 | 不要 | 必要(承諾も必要) |
| 売掛金の回収 | 自社が回収してファクタリング会社へ転送 | 売掛先が直接ファクタリング会社に支払い |
| 審査の厳しさ | やや厳しい | 比較的通りやすい |
| 債権譲渡登記 | 必要な場合が多い | 基本的に不要 |
手数料の差を具体的な金額で比べる
言葉だけだとピンとこないので、具体的な金額で見てみます。
| 売掛金額 | 2社間(手数料15%) | 3社間(手数料5%) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 手取り85万円 | 手取り95万円 | 10万円 |
| 300万円 | 手取り255万円 | 手取り285万円 | 30万円 |
| 500万円 | 手取り425万円 | 手取り475万円 | 50万円 |
500万円の売掛金だと、手数料の差は50万円にもなります。中小企業にとって50万円は大きいですよね。
もちろん、2社間でも手数料が8%の場合もあれば、3社間でも9%近くなるケースもあります。あくまで目安として見てください。
売掛先との関係への影響
手数料やスピード以外で見落としがちなのが、売掛先との関係です。
3社間ファクタリングを使うと、売掛先に「ファクタリングを利用しています」と伝えることになります。これを「資金繰りが厳しいのでは?」とネガティブに受け取られる可能性がある。
ただ、最近はファクタリング自体の認知度が上がってきていて、資金調達の一手段として理解している企業も増えています。売掛先が大手企業で、ファクタリングに理解があるなら、3社間でも問題ないケースは多い。
逆に、売掛先が小規模で「ファクタリングって何?」という反応をされそうなら、説明コストも含めて2社間のほうがスムーズかもしれません。
どちらを選ぶ?ケース別の判断基準
「結局どっちを使えばいいの?」という話をします。
2社間が向いているケース
2社間ファクタリングを選んだほうがいい場面はこのあたりです。
- とにかく急いでいる。来週には現金が必要
- 売掛先にファクタリングの利用を知られたくない
- 売掛先が「債権譲渡に承諾してくれるか不安」
- 短期的な資金ショートをしのぎたい
手数料が高くても、資金繰りが詰まって取引先への支払いが遅れるよりはマシ。そういう緊急時には2社間のスピード感が活きます。
前職であったケースだと、大口の仕入れ代金の支払い期日が迫っているのに、得意先からの入金が翌月末だった。このタイムラグを埋めるために2社間ファクタリングを検討した経験があります。銀行融資は審査に時間がかかりすぎて間に合わないから、というのが一番の理由でした。
3社間が向いているケース
3社間ファクタリングを選んだほうがいい場面はこちら。
- 手数料を少しでも安く抑えたい
- 売掛先との関係が良好で、理解を得られそう
- 資金化を急がない(1〜2週間の余裕がある)
- 継続的にファクタリングを活用していきたい
コストを重視するなら3社間です。特に繰り返し利用する場合、2社間の手数料がボディブローのように効いてきます。毎月300万円の売掛金を2社間(15%)で回していたら、年間で540万円が手数料に消える計算。3社間(5%)なら180万円。この差は経営に直結します。
一般社団法人日本中小企業金融サポート機構のコラムでも、2社間と3社間それぞれの利用ポイントが詳しく解説されているので、判断に迷ったら参考にしてみてください。
利用前に知っておきたい注意点
最後に、2社間・3社間を問わず、ファクタリングを利用するときに気をつけたいことをまとめておきます。
悪徳業者を見分けるチェックポイント
残念ながら、ファクタリング業界には悪質な業者も存在します。金融庁も注意喚起を出しているくらいです。
以下に当てはまる場合は要注意。
- 手数料が相場からかけ離れて高い(2社間で30%以上など)
- 「償還請求権あり」の契約になっている(実質的に貸付)
- 契約内容の説明が曖昧で、書面を見せてくれない
- 「給与ファクタリング」をうたっている(これはヤミ金融です)
特に「償還請求権あり」の契約は、売掛先が払えなかったときに自分が全額負担する形になります。それは売買ではなく貸付。貸金業の登録なしにやっているなら違法業者の可能性が高い。
契約前に、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」でその業者を確認するのも一つの手です。
手数料を少しでも安く抑えるコツ
手数料は固定ではなく、交渉の余地があります。安く抑えるためのポイントをいくつか。
- 複数のファクタリング会社から見積もりを取って比較する
- 売掛先が信用力の高い大手企業であることをアピールする
- まとまった金額で利用する(少額より大口のほうが手数料率は下がりやすい)
- 同じファクタリング会社を継続利用して信頼関係を築く
- 可能であれば3社間を選択する
私が経理をしていたとき、最初のファクタリング利用は情報も少なくて、提示された手数料をそのまま受け入れてしまいました。後から複数社を比較すればよかったと後悔したので、これからファクタリングを検討する方にはぜひ相見積もりをおすすめします。
まとめ
2社間ファクタリングは「スピードと秘密性」、3社間ファクタリングは「手数料の安さと安定性」。それぞれ強みが違うので、自社の状況に合わせて選ぶのが正解です。
急ぎなら2社間、コスト重視なら3社間。どちらを選ぶにしても、契約内容をしっかり確認して、複数社を比較するのを忘れずに。